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再度、症例報告・・・やっぱり”何でも内科”ですか? 愛は勝つぅ!!婦人科疾患編 [お仕事!]

症例2・・・・・28歳、既婚女性。主訴:急性腹症・嘔気。

2週間くらい前より下腹部痛を自覚。時々嘔気を覚えた。今回6月17日(水)外来受診(初診)。腹部膨満強く、やや緊満感あり。聴診ではちょう蠕動がかなり亢進。本人より妊娠の可能性があるかもと・・・ではレントゲンは禁忌か・・・とりあえず超音波・・・腹部ガスで観察困難。触診ではまずはイレウス?と思い、輸液開始と絶食、もし妊娠している場合は流産させる可能性もあるので、プロスタグランディンは使えないか・・さて困った、ところが本人より人工授精操作をしている・・とのこと。ひょっとして排卵誘発しているのかな?いずれにしてもレントゲンは撮れないのでとりあえず入院で輸液を行う。輸液と少量のプロスタグランディンは開始した。翌日、少し良くなったとはいうが、腹部は明らかに緊満がひどくやや、腹壁の阻血変化が出てきている?さらに腹部は昨日より明らかに硬い。これはイレウスではない・・・腹膜炎か腹水の急激な増加??レントゲンがだめならMRIを何とか撮ろう。朝一番で骨盤腔内MRI検査を行った。かなりじっとしていてくれないと。明らかにイレウスではなく腹水が充満し腸管が中央に偏位している?とにかく何が何だか・・・人工受精から1週間なのでハイゴナビスで妊娠反応が出るかどうかはわからないが、とにかく簡易検査を行ってマイナスであることを本人・夫に伝え、レントゲンCT を行うことを承諾していただいた。上腹部から骨盤腔にかけて、マルチスライスCT で一気撮り。なんと腹腔内は完全に腹水だらけ、腸管と思っていた空洞はなんと巨大な卵巣のう腫が腹部内を制圧していたのだ。(卵巣過剰刺激症候群)まさかここまで卵巣が大きくなるなんて思ってもみなかったので、最初は腸管が水腫様に腫れているのだと思っていたがこれですべてが繋がった・・・・人工授精前の排卵誘発で巨大化した卵巣が腹部内を圧迫してるのだ・・・かなりおったまげたが話が繋がれば、もう後は婦人科に連絡。

かかりつけ医に連絡したが、重症そうなのでうちでは見れない・・・?内科的に頑張ってもらえないか・・・と・・・えっこれは婦人科疾患だろ!!なんだそりゃ???Why??

こうなったら市民病院救急部に依頼。後輩医師が出てすぐに救急対応するとの返答。もう原因も分かり、対処法も見えてきたので、本人・旦那さんは腹痛で苦しい中にも少しだけ笑顔。

救急隊が到着するまで、中心静脈確保、バルーン留置、アルブミン2.8mg/dlと低値を補正するためラシックス+アルブミン混合注射を行い、一気に腹水減圧を図る。その後、救急車に揺られて市民病院で婦人科当番医師に患者さんを引き渡す。これで何とかなるだろう。

それにしても、卵巣があそこまで大きく腫れたのはちょっと驚き・・・・両側とも直径10cm以上かな・・・まあ決して珍しいものではないのだろけども内科ではまずそこまでの例は見たことがなかったな・・・・それにしても来院時にすぐにCTを撮れていたら一日早く(外来レベルで)診断・決断もできた。最初から、レントゲン検査なしで腸閉塞と考えてしまったのはちょっとはやとちりであった・・・・しかし、CT・MRIを見たときのとっさの判断?(誰でもわかるのかもしれませんが!)で腹腔内の丸い陰影の重なりは腸管ではなく、卵巣の卵胞が巨大化し多発していたものであった。一瞬目を疑ったが、すぐに、状況は判断できた。その後の対応はサクサクっという感じであった。まだまだ、緊急対応能力はそこそこ保たれているな~~と自己満足の懲りないおじんさんでした・・・・・

次回その画像を載せてしまおうかな??プライバシーの侵害でしょうかね・・・あとは卵巣がんの鑑別は必要ですね。CA125高度上昇もあるので・・・

診断名

  1. 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
  2. 低アルブミン血症
  3. 腹水・胸水貯留
  4. 機械性イレウス
  5. CA125高度上昇

一つだけ心配事は・・・レントゲンCTを行ったが、もし万が一??妊娠していたら・・レントゲンの影響は、少ないだろうが、心配もしたりする。まあ母体あっての妊娠だしな。しょうがないケースだったのかな・・・・

それと・・・婦人科医師に・・・内科で頑張って!と言われたのは???の思いは少しあるのです。

最後に今回のケーススタディーでは・・・・・28歳の女性と28歳男性(かなり若くおぼこく見える)の人工受精中の出来事ということと、旦那さんが急な出来事に戸惑いながらも、ひたすら奥さんを見つめ看護し、励ましていた・・・その姿を見て・・・”あ~~~愛だよな・・・愛っ!””僕も頑張るから、頑張れよもう少し”  困惑し苦しむ奥さんに”絶対大丈夫だから治るからね”と言うと、苦痛に喘ぎながらニコッと笑ってくれた。これらの純粋な気持ちが、僕にも力を与えてくれたのかな。。。という微笑ましい症例でもあった。妊娠はどうだかわからないけど若い二人なので、まあ今回だめでも、決してチャンスがなくなったわけではないので、きっと大丈夫。。。。

印象的だったのはやはり、看護する旦那さんの優しい表情。これがある限りは彼女はもう治ったも同然。悔しいけど、医療では治せない症例だったのかな。などと、ストーリーを美化してしまう?懲りないセンチメンタルおじさんなのでした。現実主義も大切だけど、もっと大切なのは、自然に相手を思いやる気持ちと、阿吽の呼吸かな・・・。好き・・ではなく、ア・イ・シ・テ・ル・・の眼差しを感じました。

 


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コメント 4

篠崎 純一

懲りない先生お久しぶりです。篠崎です。毎日ブログ拝見しております。
婦人科の救急疾患の話楽しく読ませていただきました。
OHSSは体外受精の過排卵刺激で時々ありますが、ご苦労様でした。
CT検査はだからどうと言う事はありません。

さてなかなか最後の愛してるのテーマの話は、ロマンチックさが足りない僕にはとても書けない内容でした。
この春僕には山の神様が味方してくれた様ですが、ロマンスの神様は僕にはとても降臨しそうにありません。
それではまた。
by 篠崎 純一 (2009-06-21 10:16) 

先生大変でしたね

篠田です。
大変でしたね。篠崎先生のコメントも味のあるものですね。酒精なんかもうかれています。それに、開業してしまっているので、あまり緊張感がありません。以前は救急の最前線にいたのですが・・・・・しかし、この前、外来中に、患者さんが発作性頻脈二なり、血圧も触れなくなり、恥ずかしながら、救急車に同乗して病院までついていったことがあります。やー大変でした。
後半は篠崎先生と以下同文です。
by 先生大変でしたね (2009-06-21 11:25) 

管理人

篠崎先生・・・日々海外遠征参考記録が充実してきておりワクワクしながら読ませていただいています。僕のようなにわか山ヤでは到底経験することができないすさまじい世界だな~~と感心を超えて圧倒されっぱなしです。エルブルス~エヴェレストへの道が楽しみです。この夏はせこせことMTBでも使って琵琶湖一周(再チャレンジ)と能登半島一周(初トライ)をやってみようかと思っています。~~山スキーもモチベーションは今一つでしたがマニアックなことばっかりやってたような気がします・・・
by 管理人 (2009-06-21 12:52) 

管理人

篠田先生またまたご訪問ありとうございます。
僕は篠崎先生や早川先生という超人~やや変人(失礼!)の諸先輩に囲まれてしまいかなりコアな人間になりつつあります。忙しいほど燃えてくる・・というのは医者の習性なのでしょうか??
ですから先生も次期シーズンはコアな世界へぜひ足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。。。。
普通の医師の付き合いでは到底知り合えない過激?刺激的な?人物たちに多く出会うことができて、なんて自分はちっぽけなセコイ人間だったのだろうといまさらながらに自覚させられました。本当に山の世界に入ってよかったなと思っています。
by 管理人 (2009-06-21 12:57) 

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